Wise
近年、WiseやRevolutといった多通貨口座(マルチカレンシー)サービスが流行している。これらのサービスを利用することで、手軽に通貨の交換や海外への送金、海外の口座の開設などが可能になり、手軽に海外へ現金を持っていくことができる。
サービスの利用にあたり(実質)マイナンバーカード必須なため、出国前に作成しておくのが良い。
本稿では、Wiseによる日本円とオーストラリアドルの変換およびオーストラリアにおけるATMでの現金引き出しについて解説する。
Wiseの主な特徴は以下の通りである。
- 送金と請求:銀行や他のWiseユーザーと資金のやり取りが可能である。
- 低コスト両替:海外通貨の保有が可能であり、日本円をアメリカドルやオーストラリアドル等、さまざまな通貨に両替することがアプリ上で簡単にできる。
- 銀行口座開設:現地通貨でのやり取りが可能な銀行口座を開設できる。
- デビットカード作成:国内外で利用できるデビットカードを作成可能であり、使い捨てのカードもアプリ上で作成できる。発行手数料は1,200円である。
Wiseのメリット
- 最短で数分で海外の銀行口座に入金できる。
- アプリ上で気軽かつ即時に両替が可能である。
- 比較的安い手数料である。
国内の大手銀行口座から海外の大手銀行口座に送金する場合、通常は数日かかり、多額の手数料が発生する。しかし、Wiseを経由することで、日数と手数料を抑えることが可能である。
送金の流れは以下の通りである:
1, Wiseオーストラリア口座からオーストラリアの銀行口座(例:NAB)に送金
2, 自分の国内銀行口座(例:みずほ銀行)→ Wise指定口座 → 自分のWise口座に入金
3, Wiseアプリでオーストラリアドルに変換 → Wiseオーストラリア口座
手数料:
- 送金額の0.56% + 固定手数料220円(JPN→AUD)
- +国内口座からWise指定口座への送金手数料
- +Wiseオーストラリア口座からオーストラリアの大手銀行口座への送金手数料
- +ダイナミックプライシング
内訳は以下の通りである。
- 送金額の0.56%:Wiseが課す両替時の手数料であり、変換元と変換先によって手数料は異なるが、日本円からオーストラリアドルの場合は0.56%である。
- 国内口座からWise指定口座への送金手数料:Wiseの口座に入金する際、自分が利用している日本の銀行(例:みずほ銀行、SBI)からWise指定の銀行(数回入金したが毎回PayPay銀行だった)に振り込む際に発生する手数料である。主要なネットバンキング(住信SBIネット銀行、auじぶん銀行など)であれば、毎月指定された回数の手数料が無料になることがあるので、これを活用すれば0円で済むことがある。
- Wiseオーストラリア口座からオーストラリアの大手銀行口座への送金手数料:数回試した限り、送金金額に応じた手数料が発生するが、毎回同額の割引が適用されて相殺されている。なおオーストラリアの場合、他行宛の銀行振込手数料が無料であるためこれがWiseにも適用されているのではと推測している。要検証。
- ダイナミックプライシング
その時の状況に応じて請求される料金。為替の変動が激しい場合等において請求される。内訳や計算式は不明。
デメリット
- ATM手数料が高い:旅行先で両替の代わりに現金を引き出す手段としては、やや高い印象がある。公式ページの説明によると、アカウントあたり毎月30,000 JPYまでの出金、毎月2回までの出金は無料であるが、アカウントあたり毎月30,000 JPYを超える出金にかかる手数料は1.75%、1回の出金あたり+70 JPYがかかるとしている。(この手数料とは別にATM利用時にそのATM設置会社のATM手数料が5~7$ほど取られる)
- Wiseは資金移動業者である:日本においてWiseは資金移動業者であり銀行ではないため、倒産時の保証が不安だという声がある。気にしすぎだと思う。
- 突然のアカウント凍結:インターネット上には、何も問題がないはずなのに突然アカウントが凍結されたという声が存在する。不安であれば、利用を控えるか、両替が終わったらすぐに引き出す、多額の現金を入れないなどの対策が考えられる。なお、第二種貸金業者による制約の100万円以上入金してうっかり凍結された例があるらしいが、Wiseはより制約が少ない第一種貸金業者免許を取得したのでこの制限はなくなるはずである。
- 物理カードの不正利用リスク:Wise発行のクレジットカードはデビットカードであるため、不正利用されるとその時点で現金がWise口座から引き出される。通常の後払いのクレジットカードの場合、不正利用されたことをカード会社に申告すると請求を止めてくれるが、デビットカードの場合はまず口座から現金が引き出されるため、他にお金を確保する方法がないと生活に多大な支障を来す可能性がある。対策として、アプリ上で物理カードを常時「凍結」しておき、使うときだけ凍結を解除する方法がある。
クレジットカードには、数字の羅列であるため、悪意のある人が偶然でもクレジットカード番号を当ててしまえば使えてしまうという欠点がある。そのため、Wiseに限らずデビットカードの運用には注意が必要である。Wiseのように「凍結」ができないデビットカードの場合は、必要以上の現金を口座に入金しておかないことが大切である。
円→オーストラリアドル両替してみる
2024/08/06にWiseに50000円入金し、オーストラリアドルに両替した結果は以下の通りである。
50000 JPY
– 244 JPY 当社の手数料
-1258 JPY ダイナミックプライシング(変動料金制)
= 48498 JPY 両替額
÷ 94.7329 為替レート保証
受取額 511.94 AUD
不明点
当社手数料の計算式
公式ページの通り手数料が0.56%の場合
50000円×0.0056=280円
安い分には越したことはないが、公式ページの手数料率(0.56%)とは異なる額が表示されたため、計算の詳細が不明である。
ダイナミックプライシング
公式ページによると為替の変動が激しい場合に請求される手数料とのこと。アプリ上で両替実行時に初めて表示された。トップページにWiseで両替した場合の手数料が表示されているが、この料金は表示されていない。さらに同じトップページにある他社との比較にもこの料金は含まれておらず、Wiseで両替する前にきちんとアプリで実際に送金の手順を踏み、送金直前の確認画面で手数料を表示した上で比較する必要がある。
現金を引き出し方法
両替完了後、Wiseのオーストラリア口座に入金された資金を現金化する方法は以下の2つである。
a, Wiseデビットカードを使ってATMで引き出す(非推奨)
事前にWiseデビットカードの作成が必要(1200円)。ATMにてクレジットカードのキャッシングと同様の手順で引き出す。2つのATM手数料に注意する。
手数料
- ATM会社に払う手数料:5~7$
日本で言うATM手数料に近い。利用している銀行以外のATM利用時に請求されるATM手数料と同様に請求される手数料(厳密にはクレジットカード利用だが)
- Wiseに払う手数料:月3回目以降or月累計30000円超過分の1.75%
月2回以下かつ月累計日本円換算で30000円以下の場合は無料。月3回目or30000円超過時に1.75%の手数料が発生する。旅行者が現金を気軽に入手する上では必要経費であると思うが非常に高い手数料なので、オーストラリアに銀行口座を持っている場合は非推奨。
ATM操作時、終盤に聞かれる請求を必ず現地通貨を選択する。日本円に変換(Convert)しない。
生活費として毎月20万円など高額な送金する場合はクレジットカードの海外キャッシングも要検討。
実はこのaの方法の場合両替をしていなくてもATMで引き出し時に両替をしてくれるが、両替手数料等が不明のまま実行されるので非推奨。
b,オーストラリアの銀行へ送金
Wiseのオーストラリア口座から自身のオーストラリアの銀行に送金し、その銀行口座のATMから出金する方法。aの方法の手数料がすべてかからず、Wiseからオーストラリアの送金手数料のみで済む。数回試したがオーストラリアの銀行同士の送金手数料は無料だからか毎回手数料0円になっている(要確認。コメントで手数料いくらだったか教えて下さい)。厳密には手数料が発生しているが、毎回同額の割引が入って相殺されている。
2024/08/06に試したところ、Wiseアプリ上で送金依頼を出してから5時間ほどでオーストラリアの銀行(NAB)に着金した。
まとめ
Wiseによる日本円とオーストラリアドルの変換およびオーストラリアにおけるATMでの現金引き出しについて解説した。
クレジットカードの海外キャッシングと違い、為替レートが即時で反映されアプリ上から気軽に両替ができ、オーストラリアの銀行口座を持っている場合に気軽にかつ比較的安い手数料で現金をオーストラリアに持ってこれることを解説した。
トップページに書かれていないダイナミックプライシングが発生する場合があるので、実際にアプリで送金の画面まで進んで実際の手数料を確認する必要がある。
場合によってはクレジットカードの海外キャッシングのほうが有効な場合があるので、比較して利用されたい。(記事:https://wiki.boustralia.com/atm-cashing/)
余談 Wiseのオーストラリアのブログには、ATM手数料を安くする方法として提携ATMの利用と書かれているが、Westpacを使った際には7ドルが請求された。記事が古いか、変更があったのかもしれない。
https://wise.com/gb/blog/atms-in-australia